蚊を潰す。

涼しくなってきたからか、蚊が多い。
ぶんぶぶんぶとやかましい。

少しくらいなら、かゆいのもうっとうしいのも我慢して、殺すもんかと無視を決め込むけれども、あんまり多いので、潰す。

潰すならまだしも、殺虫剤を買ってきて、シュッとひと吹き。
今は、たった一回ほんの少し指を動かしてシュッとするだけで、12時間蚊を落とすというすごいのが有る。

しばらくすると、ぶんぶぶんぶとうるさかった音が、やたら高い音に変わり、狂ったように天井に飛んで行ったり床に急降下したり、激しく飛び回って、姿を隠そうともせず、そのうち床でくるくる回り始める。

じっと観察していると、なかなか死に切れないのか、足をばたつかせ、羽を激しく震わせて、なんとも酷い。

酷いのを見るのも、酷い原因となった自分を知るのも嫌なので、それをまた潰す。潰したあとの死骸は、ティッシュで拭きとってポイッとゴミ箱に入れる。そしてなかったことになる。

これと同じことを、心のなかで人にもしている慈海がいるのだ。

無関心ということは、平穏であるということである。
興味があると、平穏ではいられない。

菩薩というのは、好奇心の塊なのかも聞いたこともあったけど、興味を持ち続けるということは、よほどしんどいことだろう。

十方微塵世界の
念仏の衆生をみそなはし
摂取してすてざれば
阿弥陀となづけたてまつる

なんまんだぶ