だからねぇ……

今から三十年ほど前、行信教校OBの方々が、吉崎別院で泊まり込みの勉強会を開いていらっしゃったそうです。
そのとき、梯和上が講師となられていらっしゃったそうで、和上がお忙しくなられた後は天岸先生がいらっしゃっていたそうです。
その話は聞いたことがあったのですが、今日改めて当時の話を聞かせていただいて、梯和上もここにお泊りになられていたと聞きました。
「だからねぇ、みぃんな一生懸命生きてるんですよ。あーでもないこーでもない言いながら、必死にねぇ生きてるんですよね。」
そんな話を、ここで夜通しお話しされていらっしゃったのでしょうか。この部屋で、この布団にくるまって、後生のお話をあーでもないこーでもない言いながらされていらっしゃったのでしょうか。
数年前、熱を出して寝込んでいた時に、すでに往生されていらっしゃった和上が出てこられたことがありました。
多くの方に囲まれていらっしゃった和上が、講堂に入られる前、私の前を通り過ぎるときに、私の方に振り返って
「あんた、本当に死にきることができますかいな?」
と、目じりの下がった優しい笑顔でそう声をかけてくださいました。
和上にお会いしたのは1度しかありませんが、東京にいた時から何度も何度も何度も和上がお取次ぎくださったたった数話のご法話の録音を携帯に入れて聞いています。何百回…は大げさかもしれませんが、本当に何度も何度も同じお取次ぎを聞いています。
何度聞いても、聞くたびに聞こえるところが違って、何度聞いてもお念仏がこぼれます。
あの声の主が泊まられた場所に、今住んでいるのかと思うと、なんだか不思議な気分になります。
あぁ、きっとおあさじの時にはいつもご一緒にお御堂にいらっしゃるのかもしれない。当時まだお若かった先生方と一緒に、毎朝おあさじお勤めさせてくださっているのかもしれないなぁとか思うと、胸がちょっときゅぅとなります。
なんまんだぶ