ほんとうに「おそろしい」人

先週末のこと。

福井別院にて、掃除中、みるみる本堂の気温が下がっていくのがわかった。

そういえば、来週はかなり冷え込むと天気予報で言っていたのを思い出す。

おあさじ(朝の勤行)にお参りにこられる方々の足元が気にかかる。

今年はなかなか雪が積もらないけど、来週は雪かきの覚悟をしておいた方がよいかもしれない。

昨年末のこと。

仲良くしてくださっている僧侶の先輩と、夜遅くまで話し込んでいた。

その日はその先輩が別院の宿直で、勉強会と称して、時々時間を作ってくださる。

勉強会、といいつつもあまり勉強といえるような内容ではないが、それでも仏法談義に花が咲く夜である。

翌朝、別院のおあさじにお参りして帰ろうと、時間より少し早めに本堂に行くと既に二人ほどお参りの方がいらしていた。

毎朝欠かさずお参りされてらっしゃるおじさん二人だ。しかしその手もとには、お数珠ではなく雑巾が握られていた。

「何されてらしたんですか?」

「あぁ、ちょっとね。やろうかってことになって」

と本堂の窓の方を向くおじさん。
もう一人の方が手を伸ばして上の方の窓を拭いている。

顔が熱くなった。
冷や汗が吹き出す。

「わ、私もやります!雑巾どこですか?」

「あぁ、これはうちから持ってきたんや。いいよいいよ、もう十五分くらいで始まるやろ。ゆっくり座ってね。」

さらに冷や汗が吹き出した。
あわてて本堂の裏に走り雑巾を取って本堂に戻ると

「もういいよ、あらかた終わったし。」

雑巾が慈海の手汗でじっとり湿った。
何もさせてもらえなかった。

前の晩、先輩とお聖教の難しい言葉を並べて、本願がどうとか信心がどうとか、ありがたいとかありがたくないだとかほざいていた自分が、なんとも恥ずかしく感じて、頭が上がらなかった。

完全にノックダウン。
やもすれば本当に、腰を抜かしそうであった。

明日朝もまた、同じ面々がおあさじに揃うだろう。

モップを握る手に力が入る。

なんまんだぶ なんまんだぶ なまんだーぶ なまんだーぶ なんまんだーーぶ なんまんだぶ なんまんだぶ なんまんだぶ