「風の音がおそろして」

「一睡もできんかった」

朝、おあさじ(朝のお勤め、朝勤行)の準備をしていると、母が青白い顔で起きてきた。

「風の音がおそろして(恐ろしくて)
おそろして、もうぜんぜん寝られん。ああ頭が痛い。。。」

「なんや、毎年のことやのに。」

余計なことをいった。

「そんなこと言ったってあんた!どんだけおそろしかったって!まどわれるんかとおもうくらいhfかkbんdkskjxjdksっbgtけkうぇrちゅういおpq……!!!」

元気だ。

「寝てれば?全部私がやりますから」

ごそごそと部屋に戻っていく母。
見ればお仏飯も炊けてない。というか炊飯ジャーの釜は昨日洗ったままで、予約セットするのも忘れてたようだ。

急いで米をとぎ、炊飯ジャーにセットし、掃除して仏間のストーブに火を入れ……、としていると、汗が浮く。

慈海がうろうろしているからか、ネコたちのテンションも上がり、走り回る。

そんなことをしているうちに、米が炊けた。お仏飯をよそい、お供えして衣に着替え、香を焚き、仏前に座る。

母はやはり出てこない。
よほどおそろしかったのだろう。
疲れて眠ってしまったようだ。

少し小さめの声でお勤めをする。

夜の暗いうち、息子もイビキをたてて眠っているうちは、いくら家のなかでも不安だったのだろう。

吹雪いていても、明るくなって、息子もガタガタし始めたら、安心したのかもしれない。

「お仏壇の前はいいですねぇ。安心して不安でいられる。」

昨日のお参りのとき、そんな話をした自分の声を思い出して、深く合掌礼拝した。

なんまんだぶ なんまんだぶ なんまんだぶ