晴れた日の朝

朝、吉崎別院の境内を掃いていると、お若いかたが門をくぐってこられた。

東の空が明るくなってきたとはいえ、まだ日も顔を出していない時間だ。

そうそう頻繁ではないけれど、たまにこうして早朝からお話しする機会がある。

訪れる方は別々だけれど、朝、日中、夕方、そして暮れた後など、その時間帯によって雰囲気も変わる。

朝お会いする方は、おしなべて笑顔だ。それも、さっぱりとされた顔をされていらっしゃる。

お若いかたの爽やかな笑顔が去った後、落ち葉を掃きつつものを思う。

かつて、朝が来るのが憂うつな夜もあった。

日が登ると、ため息をつきながら恨めしく苦々しく眩しい空を眺めたときもあったけれども、それでも朝は必ず毎日きちんと欠かさず訪れた。

晴れた日の朝はいいね。そんな夜でも、恨めしい朝日が、照らすものというものもある、のかもしれない。

なんまんだぶ

向日葵(ひまわり)

 

夕方、ひと雨来そうな空模様の下、急いで掃除道具を片付けていると、とうとう大粒の雨が降ってきた。

まだ明るい西の空を、かあかあと舞っていた群れが慌てて鹿島の森に帰っていく。

帰る場所があるのはいいね。それが場所でも記憶でも。

本降りになってきたので、館内を見回って窓を閉めて回っていると、父から電話。

先日、庭に咲いた向日葵の写真をNHKに投稿し、それが採用されて、これからNHKの天気コーナーのあとで紹介されるのだという。父の声が久々に明るい。

ここ吉崎に来て始めてテレビのスイッチを入れた。

父が育てた背の高い向日葵が写る。きっと今ごろ実家では、父と一緒にテレビを観ている母が父以上に大騒ぎして、父は照れ混じりの苦笑いをしていることだろう。

実家の仏間に「葵傾(きけい)」という時の讃額が掲げてある。若い頃父がその字の意味をお手次のお寺さんに尋ねたところ「向日葵がいつも日に顔を向けているように仏様の方を向いていきましょうという意味ですよ」と教えてもらったそうだ。*

仏間で話し込んでいるといつも父はこの話をする。

きっと、向日葵の世話をしながらもその話を何度も思い出しつつ、背がどんどん伸びていく姿を楽しみに眺め、そして大輪の花を咲かせるのを心待ちにしていたんじゃないだろうか。

明日は、久々に両親と食事をしよう。

なんまんだぶ

*「葵の御紋」から幕府に対する忠誠を云々という説もあるそうだが、ここではそういう話ではないので知識の鎧は一旦脱いでお読みください

ゼリー

「あっついのぉ!」

そういいながら父と母が吉崎の花壇の世話を手伝いに来てくれた。

「これ冷蔵庫いれとけや」と段ボール箱を渡され、なかを覗くとペットボトルのジュースとたくさんのゼリーが入っていた。

ーありがとう。でもなんでゼリーこんなに(笑)

と言うと、「お前ゼリー好きやってお母さんが買って入れたんや」と父。母が草をむしりながら「好きやんなぁ」とニコニコ顔。

正直なところ、慈海はゼリーが嫌いではないけど別に好物でもない。母に最近ゼリーが好物だと言った記憶もない。

そういえば、昔から「はい、あんた好きやろ」と、母がゼリーを買ってきてくれる事がよくあった。その度に、別に好物って訳じゃないよと笑って言っていたけれども、でもしばらくすると、また「はい、あんた好きやろ」と買ってきてくれる。

慈海は忘れてしまっているけれども、もしかすると幼い頃とかに喜んで食べていた事があったのかもしれない。もしくは、何気なく自分で買ってきていたのを母が見かけて、この子はゼリー好きなのねと思い込んだのかもしれない。

少し前までは、そんな母の勘違いを笑ったり、何度言っても買ってくるのをもったいないといったりしていたけれども、慈海が忘れてしまっている自分自身の姿が、ぼけ始めた母の頭になかにはきっとしっかりと刻まれているのかもしれない。

そして、本人さえ忘れてしまっている、その息子の喜ぶ顔をまたみたくて、喜ばせようと、何度も何度も、「あんた好きやろ」とゼリーを買ってきてくれているのかもしれない。

そんな、自分が忘れてしまった母の中の自分を思いながら、差し入れのゼリーを食べる。

ゼリー、おいしいな。

なんまんだぶ

聞見会新聞第五号がセブンイレブンから印刷出来るようになりました(4/12まで限定)

聞見会新聞第五号をセブンイレブンから印刷出来るように致しました。

予約番号は 2TDD82E6
有効期限は 2016/04/12 です。

印刷価格は320円となります。
印刷費はご負担頂ければ幸いです。

尚、上記のように期限が定められておりますので、セブンイレブンでのプリントをご希望の方は、ご遠慮無くお申し付けくださいませ。
※期限が過ぎた後も、ネットプリントを希望する方が複数いらっしゃった場合再開する場合があります。

なお、発送については慈海の都合で遅れています。
今週末に発送手続きの予定ですので、もうしばらくお待ちください。

また、本願寺福井別院、本願寺吉崎別院、他某所にも置いてございます。もし見かけたらぜひ手に取ってみてください。

死ぬ話・わからない話

先日、叔父の葬式があった。

先月も親戚のおばさんがお浄土に参られたばかりだ。あわただしくまた帰郷してきた父の曰く
「お浄土の方にいってしまった人の方が多くなったなぁ」

昨日は、となり町のお寺さんでの御正忌報恩講で、御法話取りつぎの大役を仰せつかっていた。叔父の悔やみに駆けつけたあと、そのお寺さんに走った。

「これから、わからない話をします」

そう切り出した話は、死ぬ話であった。
深川和上は
「死ぬ話はいいねぇ」
とお話しされたそうだ。

叔父の遺体を、どうみても死んだとしか思えないその姿を思い出しながら、「死ぬ話」をする。

「どんだけ考えても、考えても、考えても、死んだとしか思えないけれども、仏様はお浄土に生まれたとおっしゃる。こんなわけのわからない話はないです。」

わからない話はいい。
わかる話はいずれ忘れるもの。

なんまんだぶ なんまんだぶ なんまんだぶ

ほんとうに「おそろしい」人

先週末のこと。

福井別院にて、掃除中、みるみる本堂の気温が下がっていくのがわかった。

そういえば、来週はかなり冷え込むと天気予報で言っていたのを思い出す。

おあさじ(朝の勤行)にお参りにこられる方々の足元が気にかかる。

今年はなかなか雪が積もらないけど、来週は雪かきの覚悟をしておいた方がよいかもしれない。

昨年末のこと。

仲良くしてくださっている僧侶の先輩と、夜遅くまで話し込んでいた。

その日はその先輩が別院の宿直で、勉強会と称して、時々時間を作ってくださる。

勉強会、といいつつもあまり勉強といえるような内容ではないが、それでも仏法談義に花が咲く夜である。

翌朝、別院のおあさじにお参りして帰ろうと、時間より少し早めに本堂に行くと既に二人ほどお参りの方がいらしていた。

毎朝欠かさずお参りされてらっしゃるおじさん二人だ。しかしその手もとには、お数珠ではなく雑巾が握られていた。

「何されてらしたんですか?」

「あぁ、ちょっとね。やろうかってことになって」

と本堂の窓の方を向くおじさん。
もう一人の方が手を伸ばして上の方の窓を拭いている。

顔が熱くなった。
冷や汗が吹き出す。

「わ、私もやります!雑巾どこですか?」

「あぁ、これはうちから持ってきたんや。いいよいいよ、もう十五分くらいで始まるやろ。ゆっくり座ってね。」

さらに冷や汗が吹き出した。
あわてて本堂の裏に走り雑巾を取って本堂に戻ると

「もういいよ、あらかた終わったし。」

雑巾が慈海の手汗でじっとり湿った。
何もさせてもらえなかった。

前の晩、先輩とお聖教の難しい言葉を並べて、本願がどうとか信心がどうとか、ありがたいとかありがたくないだとかほざいていた自分が、なんとも恥ずかしく感じて、頭が上がらなかった。

完全にノックダウン。
やもすれば本当に、腰を抜かしそうであった。

明日朝もまた、同じ面々がおあさじに揃うだろう。

モップを握る手に力が入る。

なんまんだぶ なんまんだぶ なまんだーぶ なまんだーぶ なんまんだーーぶ なんまんだぶ なんまんだぶ なんまんだぶ

「風の音がおそろして」

「一睡もできんかった」

朝、おあさじ(朝のお勤め、朝勤行)の準備をしていると、母が青白い顔で起きてきた。

「風の音がおそろして(恐ろしくて)
おそろして、もうぜんぜん寝られん。ああ頭が痛い。。。」

「なんや、毎年のことやのに。」

余計なことをいった。

「そんなこと言ったってあんた!どんだけおそろしかったって!まどわれるんかとおもうくらいhfかkbんdkskjxjdksっbgtけkうぇrちゅういおpq……!!!」

元気だ。

「寝てれば?全部私がやりますから」

ごそごそと部屋に戻っていく母。
見ればお仏飯も炊けてない。というか炊飯ジャーの釜は昨日洗ったままで、予約セットするのも忘れてたようだ。

急いで米をとぎ、炊飯ジャーにセットし、掃除して仏間のストーブに火を入れ……、としていると、汗が浮く。

慈海がうろうろしているからか、ネコたちのテンションも上がり、走り回る。

そんなことをしているうちに、米が炊けた。お仏飯をよそい、お供えして衣に着替え、香を焚き、仏前に座る。

母はやはり出てこない。
よほどおそろしかったのだろう。
疲れて眠ってしまったようだ。

少し小さめの声でお勤めをする。

夜の暗いうち、息子もイビキをたてて眠っているうちは、いくら家のなかでも不安だったのだろう。

吹雪いていても、明るくなって、息子もガタガタし始めたら、安心したのかもしれない。

「お仏壇の前はいいですねぇ。安心して不安でいられる。」

昨日のお参りのとき、そんな話をした自分の声を思い出して、深く合掌礼拝した。

なんまんだぶ なんまんだぶ なんまんだぶ

【日程変更しました】第十五回「念仏会(ねんぶつえ)」開催のお知らせ(2016年2月)

2016年2月の「聞見会念仏会(ねんぶつえ)」を下記の通り開催します。

第十五回 聞見会念仏会

【開催日時】 2016年 2月6日(土)7日(日)15:30
※日程が変更になりました

【開催場所】 慈海宅 仏間

1月に引き続き、今月も慈海宅で開催いたします。

なお、3月は今のところ、

3月5日(土)

の日程で開催を予定しています。
おそらく3月も慈海宅での開催となると思われます。

4月以降も毎月第一土曜日か、日曜日での開催を考えていますが、
4月については、本願寺吉崎別院の「蓮如忌」法要のタイミングに合わせて、他のイベントも企画したいと考えています。

 

ちなみに、
開催日時、場所については急遽変更がある場合があります。
その場合は、Facebook「聞見会グループ」か、このサイトにお知らせを掲載しますので、どうぞご確認くださいませ。

どうぞ、一緒にお念仏しましょう。
なんまんだぶ